前回に続いて、山善工務店の事例を紹介する。今回は施工手順についてお伝えする。
工事に先立って、まずは現況をしっかりと調査することが重要になる。最初に確認するのは屋根の形状。勾配の低い屋根や変形屋根の建物だと、小屋裏に人が入って作業ができるだけの懐(ふところ)の寸法がなく、工事がやりにくい部分が生じるためだ。
小屋裏から気流止めなどの工事ができないと、部分的に内壁を壊して工事をするしかなくなる。そうなると工事費が嵩んでしまうので、300万円では納まらなくなる。
築20 数年になる住宅の床下の様子。ベタ基礎だが断熱材は施工されていない。ベースコンクリートや防湿コンクリートがあると作業性はぐっとよくなる
既存の天井断熱の様子。断熱材が置いてあるだけ。築20~30年の住宅にはこうした事例が多い
次に小屋裏に上がり、床下にもぐって断熱材の施工状況などを確認する。関東の築20 ~ 30年程度の住宅だと、小屋裏にはグラスウール10K100㎜厚の薄い断熱材が入っている程度で、床下にはグラスウール10K40㎜厚ないしスタイロフォーム⒛㎜厚が入っている程度という事例が多い。いずれのケースも断熱材の施工精度は悪く、隙間があったり、部分的に脱落していることが多い。
またユニットバス周辺も断熱施工の欠陥が多い部分だ。築20~30年前の建物だと、ユニットバスが断熱エリア外に設置されている事例が多い。このケースだと、ユニットバスの天井上などに内外を隔てる断熱材を施工して断熱エリアとしっかりと縁を切る必要がある。現実にはこうした施工がされていない事例が多い。この場合、床下からの冷気を建物内に呼び込んでしまい、断熱の効果が半減してしまう。ユニットバス周辺も重要なチェックポイントの1つだ。
この年代の建物は、床下から見ても小屋裏から見ても目視で分かるほど壁のあいだに隙間が多い。壁や小屋裏の断熱材が気流に晒されており、本来の性能を発揮していない。実際、小屋裏に入ると壁の空隙から気流が流れてくるのが体感できる。それくらい築20~30年前の建物は断熱や気密に対して、意識が低い建物が多い。言い方を変えると気流止めをやるべき箇所というのは、床下や小屋裏に入ればおのずと分かるということなので、気流止めを施すべきポイントは非常に明快だ。
次回は具体的な気流止めの施工のポイントについて解説する。