前回までは天井の断熱改修の手法を紹介した。今回は床断熱について紹介する。
コストを意識しながら断熱改修を行う場合、床の断熱改修は既存の床を生かしながら行うことになる。その場合、和室の畳を上げるなど、一部の床を上げて床下にもぐる。断熱改修の対象となる住宅の多くの現場は、築20年程度であればベタ基礎が多いが、30年前だと布基礎の現場がほとんどだ。いずれも床下の懐寸法は400㎜程度であることが多い。布基礎の場合、床下には束が多数立っており、根絡みが施されている場合もあり、床下での移動は非常に困難で作業性が悪い。
既存の床は無断熱か、断熱材が入っていても、根太間にグラスウールやポリスチレンフォームなどが、25〜40㎜厚程度の中途半端な断熱厚で施工されていることが多い。
■床下の作業は手間がかかる
床下の断熱施工に際しては、床下に防湿コンクリートが打たれていない場合、防湿を兼ねて、まず地盤面に0.2㎜厚の防湿フィルムを張り、それから断熱工事に入る。床下の環境にもよるが、フィルムを張らずに作業すると、作業者の体がドロドロになる。
地面が露出している場合、防湿フィルムを敷いて作業環境を整える。床下の防湿にも効果がある(写真提供:エーゼン大塚建設)
床下にもぐる工事は体力を使う。また前述のように作業環境が悪いので、大工には嫌がられる。要領を得た大工でも、施工面積60㎡の場合で、2人1組で最大3日は掛かる。このように手間がかかることが、建て主には伝えにくいので、この部分の工事単価を高く設定しづらい。
■床の気密にも注意
床断熱の施工は床下から行なう。断熱材の選定にはさまざまな意見があるが、山善工務店では32kのグラスウール80㎜を大引間に施工し、落下しないように桟木で押さえる。なお、和室の場合、気密確保にはひと手間が必要だ。洋室のフローリングの下地は合板だが、畳の下地に荒床が張られている。荒床は板同士の隙間が大きいので気密テープを張って床下の空気を遮断する。
床下の大引間にグラスウールを80㎜厚を嵌めたところ(写真提供:山善工務店[以下、同じ])
グラスウールを嵌めた上で桟木で押さえている
こうした手間のことを考えると、大引の下端にシートを張って、ブローイングするという考え方もある。ブローイングであれば、大引き間だけでなく既存の根太と断熱材の隙間にも入るので施工の確実性は高い。ただし、工事費としてグラスウール32Kの倍になる。