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2017/05/16 08:35 - No.93


第8回 天井断熱にはブローイングが向いている


断熱改修の教科書
大菅 力

2017/05/16 08:35 - No.93

 

今回は天井断熱の施工の続編で、ブローイング(吹き込み工法)について解説する。

前回述べたグラスウールを敷き詰める作業の煩雑さを考えると、天井断熱はブローイングを採用するほうが圧倒的に施工性はよい。特に既存の断熱材を生かそうとすると、その上から降り積もらせるだけで、既存の断熱材の隙間や筋かいとの取り合いなどにも隙間なく充填できる。これらの断熱材は、材料により多少の差はあるが、いずれも軽量であり、厚く積もらせたとしても、天井を始めとする躯体への負担は低い。施工も非常に簡便である。

天井断熱にブローイングを採用する場合、責任施工となることもあり、材料単価はマット系グラスウールよりも多少高くなるが、作業は単純で短時間で終わるので、採用する利点が多い。ただし材工価格の相場には地域差があるので、実勢価格を踏まえて判断する。


セルロースファイバーの荷姿。袋詰めで搬入される(写真提供:山善工務店[以下、同じ])


ブローイングのためにホースを引き回す経路は養生する


グラスウールとセルロースファイバー

ブローイングは東北・北海道で普及しており、材料としては、グラスウールとセルロースファイバーの比率が高い。たまに建主から飛散について問い合わせがあるようだが、いずれの材も繊維が密実に絡みあっており、小屋裏換気などの風量で繊維が飛散するようなことはない。

グラスウールのなかで、性能値が高いのは高性能グラスウール。繊維径が4~5μと細く、同じ密度でもより多くの空気を含むことができる。天井に用いる場合、標準施工密度は10Kg/m³で、熱伝導率は0.052w/m・kとなる。

セルロースファイバーは古新聞紙の繊維を解いて綿状にした断熱材。湿気容量が大きいため、断熱材の内部で結露が発生した場合、結露水を内部で拡散し、断熱性能を低下を防ぐ。天井に施工した場合の密度は25Kg/m³とグラスウールの2.5倍の比重があり、遮音性も高い。重量的には躯体に影響を与えるほどではないが、平屋など和室天井に吹く場合はやや負担になる場合がある。

グラスウールとセルロースファイバーの工事費(材工単価)だが、後者が若干高価なようだ。断熱厚は前回記述したように、関東であれば200㎜厚が目安で、夏場の暑さ対策を重視する場合は250㎜となるだろう。


施工中の様子。まんべんなく降り積もらせていく


施工後の様子。200㎜厚吹いている


自社施工の可能性

新築を含めて、ある程度、ブローイングの棟数が見込める場合、自社でセルロースファイバーなどの施工を手掛けるという考え方もある。購入先にもよるが吹き込み機械の価格は150万円程度のようだ。自社施工だとコストは大幅に下がり、はマット状のグラスウールを用いるよりも安価になる。ただし、断熱材を補完する倉庫が必要となるので街なかの会社には向かない。





第1回 断熱改修の可能性

第2回 部分断熱の優先順位

第3回 300万円で「次世代レベル」に改修する

第4回 小屋裏で作業できるかどうかで費用が変わる

第5回 気流止めのポイント

第6回 気流止めに用いる材料

第7回 天井断熱は下屋の扱いに注意

第8回 天井断熱にはブローイングが向いている

第9回 床断熱は和室の気密にも注意する

第10回 窓廻りは真空ペアガラスか内窓か

 
大菅 力
フリーランス

1967年東京生まれ。早稲田大学第二文学部中退後、木材業界雑誌の出版社を経て1994年株式会社建築知識(現 株式会社エクスナレッジ)入社。月刊「建築知識」、季刊「iA」などの建築、インテリア専門誌の編集長を務める。2010年退社。 現在フリーランスとして、季刊「リノベーションジャーナル」(新建新聞社刊)の編集長を務める。主な著作に「リフォーム 見積り+工事管理マニュアル」(建築資料研究社)、「世界で一番やさしい仕上材(内装編)」(エクスナレッジ)、「心地よい住まいの間取りがわかる本」(エクスナレッジ)などがある。

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