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2020/12/18 07:54 - No.961


第3回「現場訪問回数」の適正値の根拠とは?


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~思考が変われば現場施工も変わる!~NEXT STAGEが監修する施工管理メソッド
小村 直克

2020/12/18 07:54 - No.961

 
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様々なビルダー様の所へお伺いした際に経営者様から、「現場監督に一人当たり何棟持たせたら良いのだろうか?」という質問を非常に多くいただきます。

確かに、現場監督不足という環境の中、会社としては何とか少ない人数で多くの仕事を回したいというTOPの願望は理解できるのですが、やみくもに訪問回数を削減をすることで、今まで以上に根拠のない業務負担を強いられ、結果どんどんと現場監督が離職してしまいます。


前回のコラムにも記載しておりましたが、弊社のアンケートデータでは、住宅着工から竣工までに現場監督が建築現場に訪問する回数は、地域密着型の工務店様であれば約40回/1現場、また年間100棟を超える大型分譲系ビルダー様では約20回/1現場というデータが確認されています。

このデータを地域工務店様からみると大型分譲系ビルダー様の行っている訪問回数は、回数的にはなんとなく労働生産性が高いように見受けられます。

ですが、付加価値生産性という角度から見ると、本当に適切な労働生産性が図れているのか?ということも懸念されます。

そもそも、何十回と現場に訪問しようが、一番大切なことは「何のために現場に行くのか?」という目的が重要であり、その作業そのものが現場管理者の仕事にとって「主体業務」なのか?それとも「附帯業務」なのか?という棚卸が必要になってくるのです。


その前に一度、第一回目のコラムでお話しした「施工管理の8つの役割」を思い出してみてください。



上記の8つの役割というものが施工管理業務を「シングルタスク化する!」という行為となります。

そのシングルタスク化された中でも、特に現場でしかできない役割は以下の3つしかない!ということも加えて前回お伝えしています。



この「現場ですべき3つの役割」という仕事から適切な現場訪問回数を導いていくことが、本質的な訪問回数の導き出す為の考え方となります。

この役割を全く整理されていない中で、現場に訪問するという行為は、単純に「段取り屋」という付帯的業務だらけの負の業務スパイラルに足を踏み入れることになりますので、ここだけは絶対に避けなければなりません。

それではまずは、このシングルタスク化された「現場でやるべき3つの仕事を棚卸する!」という原点思考から、現場訪問の有効性を紐解いていきましょう!

    

 

有効な現場訪問していく為には、大切な3つの前提条件が発生します。



①すべての管理業務に人的依存しない品質基準と、それを判断するモノサシについてです。

現場ですべき品質管理は、全て目指すべき品質目標の設定が必要となります。

皆様に解りやすくお伝えするために、少し例を挙げてみましょう!

例えば、基礎底盤コンクリート打設前の「防湿フィルム」の施工状況の例です。



施工管理を進めていく上で、きっと社内には現場チェックシートのような作業管理シートが存在しているはずです。

この作業管理シートには、上記のような品質基準に関わるチェック内容から、作業確認のようなものまで混在しているのが現状ではないでしょうか。

これはつまり、主体業務と附帯業務が混在しているということです。

現場で行う「品質管理」という役割には、品質適合されていない箇所を抽出し、是正して前に進めるという役割があります。

ならば、この業務は主体的にやらなければならない管理業務と言えるでしょう。

しかしながら、「清掃はできているか?」「○○は納材されているか?」などの作業管理も混在していることで、防湿フィルムのような品質管理項目も、「クラウドアプリで職人に写真を撮らせてお終い!」という状況では、本末転倒です。

むしろ納材された建材の納品書をクラウドで職人さんに撮影してもらうなどの附帯的業務をお任せしてこそ、現場監督の付加価値生産性を上げて行く判断と言えるでしょう。

このようなロジックでしっかりと自社の基準を設定し、組織的に測定管理ができる環境を社内で整備しておく必要が大前提にあるのです。


次に、②施工を進める上で、絶対に後戻りできない工程タイミングを把握し、そのタイミングで主体的業務を管理するという考え方です。

現在、1棟の住宅を完成させるために、仮設工程から竣工まで、20業者以上の職種が現場に入り、すべて取り合いの中で施工され完成して行きます。

その中で特に施工の不具合は、常に工種の取り合いで多発しやすく、例えば外壁業者が丁寧に透湿防水シートを施工しても、設備業者や電気業者が外壁貫通部の止水処理を適当に行ったらどうなるでしょうか?

そのまま外壁を張り上げてしまったら、外部からの漏水事故の可能性を一気に引き上げてしまうことになります。

その為にも、品質管理をするタイミングというのは「後戻りできないタイミング」と言えるでしょう!

また、これを逆に言い換えれば、「手直しができるタイミング」ということが言えるのです。

だからこそ工程の把握を第一優先とし、しっかりと自社の基準に適合しているのか否か?を判断し、たとえ不適合があったとしても、その場でしっかりと愚直に改善する習慣さえ根付けば、リスクの高い住宅を製造するということは絶対にありません。

品質管理という役割の中では、主体性業務の本丸といっても過言ではありません。

是非、以下の工程タイミングを徹底的に意識し、このタイミングに合わせて現場でやるべき主体的業務に、附帯的業務を集中させることを試みてください。


 

③その主体業務の管理時に、附帯業務を集約させているか?




上記の表を見てお分かりのように、現場訪問目的の基本は、「品質管理」「安全管理」「環境保全」という、現場でしかできない管理に特化し、自社の目指すべき基準に対してしっかりと評価し、改善を図ることが主体業務となります。

この業務だけに特化し意識すると、恐らく現在の訪問回数の半分近くが削減できる筈なのです。

ただ、附帯業務もそれなりにすべき内容もあることから、主体業務の後戻りできないタイミングに、できるだけ集約する習慣を付けていく事が効率を上げるポイントとなります。

また、エビデンスを残すという作業も施工管理上必要となりますので、この部分については協力業者様の力を借りながら、クラウドアプリ等のサービスを上手く利用し、効率的に推進されることをお勧めいたします。


今回のコラムを総括すると、現場訪問回数が多いことは決して悪いことではなく、上記の表の「段取り関連」という内容に当てはまる作業を行い、現場に訪問する回数が増えることを悪と考えるということです。

特に段取り関連を「ゼロ」にすることは無理としても、この根本的改善は「着工前準備にすべて起因する」ということをここでしっかりと認識しておきましょう!

施工管理の8つの役割の現場以外ですべき5つの役割が、着工前に精度高く完了させればさせるほど、現場ですべき適正な現場訪問活動が実現できるに違いありません。

 

 

株式会社 NEXT STAGE|06-6622-0333|info@nextstage-group.com 

 

 


 

第1回:「現場管理の方法は変わり始めている」
第2回:「基礎」工事のポイント✕「相談できる場所」
第3回:「土台」工事のポイント✕「自社基準があるから判断ができる」
第4回:「ルーフィング」工事のポイント✕「OJT教育」
第5回:「構造金物」工事のポイント✕「設計図書の工夫で不備をなくす」
第6回:「耐力壁」工事のポイント✕「監査は改善、検査は対処」
第7回:「外壁防水」工事のポイント✕「情報共有の重要性と現場の透明化」
第8回:「通気層」工事のポイント✕「原理原則を知るとわかること」
第9回:「断熱」工事のポイント✕「第三者監査を取り入れる目的」
第10回:「内装ボード」工事のポイント✕「職人の技能をほめる」
第11回:「小屋裏換気」工事のポイント✕「最初からハードルを上げないこと」
第12回:「浴室・浴室廻り」工事のポイント✕「生産性向上を図る!「ムリ」「ムダ」「ムラ」の改善」
第13回:「外部仕上げ」工事のポイント✕「人材育成」という課題の解決
第14回:「コンクリート・型枠」工事のポイント✕「コスト削減と施工品質確保の両立」
第15回:「設計要因における不備解消」のポイント✕「民法改正に備える」
第16回:「床」工事のポイント✕「工程管理は2つの軸のバランスである」
第17回:「バルコニー防水」工事のポイント✕「現場品質が向上しない理由。ここが欠けている!」
第18回:「大工職人」のファインプレイ✕「住宅リフォームにこそ、施工手順マニュアルが不可欠」

 


 
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小村 直克
株式会社 NEXT STAGE

1968年2月生まれ。1990年大阪学院大学経済学部卒業後、小堀住研(株)(現:(株)ヤマダホームズ)、 そして建材商社を経て、2006年に(株)NEXT STAGEを創業。 民間でいち早く第三者検査事業をスタートさせ関西を中心に普及させてきたが、本質的な技術者の人財化や 品質向上への仕組みにギャップを感じ、2013年には、業界初の施工品質監査ナレッジマネジメント体系を業界に提唱し、 「監査」という独自の手法を用いたPDCAサービスを展開する。 現在では全国8拠点、800社を超えるビルダーがサービスを導入し、2020年には建築技術に特化した 学習環境プラットフォーム事業を本格化させ、2021年8月より、これまで蓄積してきたテクニカルビックデータを駆使し、 誰もが参入できなかったデータ&アナリティクス事業を実現させ、これからの住宅価値を変えるエッセンシャルな建設DXを 推進する。 

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