木造住宅の「構造」について
構造は耐震性能などの安全性を確認するためのとても重要な要素です。しかし、苦手意識を持っている建築士や建築関係者が多く、構造が得意な方はとても少ないのではないでしょうか。
なぜなのか??
僕自身が構造計算を勉強して行く過程で、ぶつかった問題点、抱いていた違和感について考えてみました。
どうして構造が難しいのか?
まず、一つ目、「そもそも構造を知っている人が身近にいない」。
これは、大きな問題です。社内どころか、知り合いの建築士にも構造を知っている人、構造が得意な人がいない・・・。だから、構造に関する話題も出ないし、構造について疑問が出ても聞けないし解決もしない。
二つ目は、「構造の本が難しい」ということ。
構造に関する本はたくさん出版されています。みな、同じような内容で、教科書のように難しい記号や数式が並び、本を開いただけで拒絶反応が出てきます。
三つ目は、「構造に関するセミナー、講習会が難しい」。
構造の本が難しいことと一緒ですね。難しい記号や数式、専門用語ばかりで苦痛で眠くなる・・・。また、建築士を目指す時でも、構造の科目は意味不明の数値や数式を丸暗記。構造が好きになり、構造を理解し得意になる環境はどこにもありません。
難しい構造をわかりやすく!
そこで、これらを解決することで、木造住宅の「構造」を理解し、得意になる方々が増えるのではないかと考え実践しています。
まず、一つ目、「そもそも構造を知っている人が身近にいない」。これに関しては、自分自身が構造を知っている身近な人になろうと考えました。身近とは社内や近所にいなくても何とかなります。メールやSNSを利用することで、「すぐに聞ける」、「すぐに疑問が解消できる」ことが可能です。
いまは、毎日のようにメールやFacebookで相談や質疑が来ます。できるだけ早く回答するようにしています。また、Facebookでは「構造塾」グループを作成し、グループ内での公開型で相談や質疑回答もしています。最近では、グループメンバーが3000人を超え、それぞれの分野の専門家も増えてきました。相談や質疑は僕が答えるだけではなく、僕以上の専門知識を持った方が答えて頂ける状況にも発展しています。
二つ目は、「構造の本が難しい」ことについて。ここについては、自分自身でわかりやすい本を書こうと思い、本を数冊書きました。どうしたらわかりやすいのか、一方的に聞くよりは会話しているときは理解しやすいと気が付き、本は会話形式にしています。そして専門用語や難しい記号、数式は極力使わない、こんな本を書きました。
三つ目は、「構造に関するセミナー、講習会が難しい」、ここを「構造塾」で解決しています。構造を理解するには「構造の必要性を感じる」こと、そして「構造をイメージする」ことから始まります。そこで、「構造塾」という木造住宅の構造を学ぶことのできる塾を立ち上げました。
「構造の必要性を感じる」とは、地震の被害状況を見ること、聞くことが一番の近道です。よって、「構造塾」では、地震被害の現地調査を行い、その結果を構造塾会員の方々に伝えています。そして、構造は必要性を感じることで、難しい構造を学ぶ意欲が出てきます。
次に、「構造をイメージする」とは、木造住宅に作用する地震力とはどのようなものなのかを自分の体で例えて考えてみたり、耐力壁の配置バランスが良い場合と悪い場合の違いを、自分自身が横から押されたときに、どのように耐えるかを考えてみたりと、様々な実例やたとえ話でイメージつくりをしていきます。そうすることで、構造はどこにでもあるもの、難しくないものと感じてもらいます。
このようなことを実践することで、木造住宅の構造が難しいものではなく必要なものを考え、構造を学び、構造計算を実践する建築士が増えていくことを願っています。
第1回:どうして「構造」って難しいの?
第2回:なぜ、構造計算をしないでいられるのか
第3回:「経験と勘」では木造住宅は安全にも快適にもならない
第4回:構造計算できない人に「経験と勘」はない!
第5回:荷重に対する感覚が重要 雪の重さは半端ない!
第6回:熊本地震その後、益城町のいま2019年
第7回:四号特例について考えてみる
第8回:四号特例について考えてみる その2
第9回:木造住宅の構造安全性確認方法について
第10回:四号建築物の仕様規定
第11回:四号建築物の仕様規定 8項目の仕様ルール その1
第12回:四号建築物の仕様規定 8項目の仕様ルール その2
第13回:四号建築物の仕様規定 8項目の仕様ルール その3
第14回:四号建築物の仕様規定 8項目の仕様ルール その4
第15回:四号建築物の仕様規定 8項目の仕様ルール その5
第16回:四号建築物の仕様規定 8項目の仕様ルール その6
第17回:四号建築物の仕様規定 8項目の仕様ルール その7
第18回:四号建築物の仕様規定 8項目の仕様ルール その8